東京ワインコンプレックス(Tokyo Wine Complex)

「チリのファインワインを紹介したい!」
コンセプト明快な知的アンバサダー

〈ユヤイ・カパック・アルパ有限会社〉和田ロベルト恒多さん


業界人も大注目
最先端のチリワイン事情が解る基地

 文京区向丘――根津神社からもそう遠からぬ道を歩いているとひょっこりと、小さくてお洒落なワインショップが現れます。 この小ぢんまりとした可愛らしいお店が、「チリワインの真価を知りたかったらユヤイに行け!」と、今、業界人も大注目のインポーター〈チリワインショップ ユヤイ〉の和田ロベルト恒多さんの本拠地です。
木目を基調とした店内は、三畳ほどの広さですが、巧みな空間演出で狭さを感じさせません。棚には、珍しいチリワインばかりが100本以上並べられています。
 「でもね、ここショップじゃないんですよ。夏の間はほとんど開けていませんしね。」
 と、和田さん。では、ここは……?
 「うちは、ネット通販専門なんです。ほとんどのお客さんがリピーターで、その口コミによって輪を広げています。いちど本当に優れたチリワインに出会うと、次々に興味がわいてくるのでしょうね。日本で、うちほどコアにチリワインを扱っているお店はありませんから、自然と常連のお客さんとのお付き合いは深くなります。やりとりをしているうちに、『是非会いたい、会って話しがしたい!』と希望される方が多いので、通販の発送用倉庫の一部を改造して、手作りでこの空間を作ったというわけです。」  たしかに、和田さんのチリワインに対する該博な知識は、単なるワイン通とは一線を画しています。ワインのプロフェッショナルでさえ脱帽するほどですから、ワインファンであれば誰しもお話を聞きたいと思うのは当然でしょう。
 「展示してあるワインを見たり、あるいは飲んだりして、皆さんここに来るとゆっくりと過していかれます。ですからここは、チリワインの世界に奥深さを、堪能していただくスペースといってよいかもしれませんね。」
 奥の倉庫には、まだまだ数えきれないほどのチリのファインワインが眠っています。現在、和田さんが直接取引きしているのは16の造り手。ネット上で扱っているアイテムは、およそ350種類にものぼります。

明確なコンセプトで追求する
チリワインの真価

 今から15年ほど前、俗に「チリカベ」などと呼ばれてブームを起こしたチリワインは、しかし「安さ」ばかりを全面に押し出した低価格アイテムばかりでした。
 「安易に扱われていて、ファインワインを紹介するインポーターがいない。チリワインの現状を、きちんと説明できるひともいない」――そんな状況をビジネスチャンスと捉えた和田さんは、2006年にユヤイ・カパック・アルパ有限会社〈チリワインショップ ユヤイ〉を立ち上げます。
 商社に勤めていたお父様の仕事の関係で、南米エクアドルで生れた和田さんは、高校入学のために帰国し、大学の機械工学科を卒業。その後、サラリーマンとして日本の企業に勤めたり、子供の頃からの夢をかなえるためにチリの大学に入りなおして獣医学を専攻したり……と、さまざまな人生経験を重ねたそうです。やがて、日本の中古車をチリにトレーディングする仕事に就いていた時、たまたま事務所がチリ屈指のワイン産地マイポヴァレーにあったことで、和田さんの人生は大きく変わります。
マイポヴァレーという土地柄、チリの大地から生み出される様々な独創的ファインワインに出会った和田さんは、早速、カトリカ大学の社会人向けの醸造学部に入学しました――と言うのは簡単ですが、これは大変なこと。
 チリカトリカ大学は、世界各国でヴァチカンが直接運営している名門大学のひとつで、いわばチリの最高学府。現在、チリ人醸造家が世界的規模で活躍しているのは、カトリカ大の醸造学部が優秀であるから――といって過言ではありません。
 そんな名門大学で、栽培から醸造までチリワインのすべてを学び、プロフェッショナルとなった和田さんが痛感したのは、
「日本では大手インポーターが流通を独占していて、チリワインの深い文化が浸透していない。」
という現実でした。
 「チリワインの真価を伝えるために、日本に帰って、小売通販をはじめよう――そう、決意しました。会社を立ち上げるにあたっては、『ウェブサイトを使って販売する、しかし、大手サイトのショッピングモールは利用しない。』というコンセプトを明確にしました。ショッピングモールに参加すると、結局、価格競争になってしまう。きちんとファインワインを紹介したい、という目標からは外れてしまいますからね。」

「まるで蜃気楼のようなワインショップ」
オーナーが夢見る、この先の展望は?

 2006年の設立後、わずか数年で〈チリワインショップ ユヤイ〉には、しっかりとした顧客がつきました。意外なことに、業務店よりも一般ユーザーがメインだとか……。
 「チリのファインワインをきちんと紹介したい――という、第一の目標は、クリアしつつあります。大きなネットのモールに所属せず、一般ユーザーの方を対象に、コツコツ努力したことが功を奏したのでしょう。これは一例ですが、納品書に必ずワインの説明などのコメントを添えたのです。きちんとしたファンがついてくれれば、販売は必ず安定しするものですから。」
 また、思わぬファンの出現もありました。倉庫に併設したお店(?)は、あくまでも、予約を入れて和田さんを訪ねて来るお客用の、いわば応接スペースなのですが、出荷作業を行うため、一日に3時間ほどはシャッターが開かれます。その時間、たまたま店の前を通りかかった近所のひとが、「ここはワインショップなのですか?」と、迷い込んでくるようになり、それをきっかけにチリワインにのめり込むひとが、後を絶たないのだそうです。
 「いつ開いているか解らない、まるで蜃気楼のような店……といわれています(笑)。」
 次なるアクションとしては、レストランや小売の酒屋さんに向けて、「チリにはファインワインがたくさんあることを伝えていきたい」……という和田さん。
 「そのためには、分析的にワインを評価する方法を共有したり、商品のコンテンツづくりを含めて、ワインのプロの方たちと信頼関係を築いていきたいと思っています。」
 これほどの思い入れの背景には、チリへ深い愛着があります。豊かな大地、美しい自然、そして、真面目で勤勉な国民性……和田さんは、チリに行くことを「帰る」と表現します。
「ゆくゆくは、チリに帰って、自分の畑を持って、ワイン造りをしたいんです。100年以上の樹齢のパイス種を使って、赤ワインが造りたい。その自分が造ったワインを、日本で売れたら最高ですね。まだまだ、道は半ばにも達していません。」  流石はチリの最高学府カトリカ大仕込、大きな目標をお持ちです。ちなみに「ユヤイ・カパック・アルパ」とは、「智利」という漢字表記にかけて、ケチュア語の「智識の大地」という意味だとか。チリのファインワインを広める基地としては、まことに相応しい名前といえるでしょう。

インタビュー・文:高山宗東

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